2018.7.18

街の健康アドバイザーを目指して


市民団体ウェルネスサポートの中心メンバーとして活動する美内さん。生活習慣・生活環境改善の啓発活動を行うようになった経緯や今後の展望についてお話をお聞きしました。

美内明子さん
市民団体ウェルネスサポートの中心メンバー。生活習慣・生活環境改善の啓発活動に従事するかたわら、スポーツファーマシストとしてアンチドーピングのためのサポート活動も行っている。

予防医療との出会いと確信

幼少時の夢は薬でたくさんの人を救うこと

どういった経緯で予防医療を志すようになったのですか?

小学生の頃の夢は薬剤師になることでした。親族の影響で医療業界が身近だったことと、近所の薬局がとても頼れる存在だったことが理由だと思います。近所の薬局は何でも相談できるまさに「かかりつけ薬局」と呼べる薬局でした。当時、地域の健康を支えていたのはあの薬局だったと思います。そういった背景もあり、薬剤師という仕事のすばらしさを子どもながらにイメージできていたのだと思います。

薬への興味と現実

中学生になると、化学式に夢中になりました。あのCO2とかの記号です。色々な化学反応で新しいものが生まれるところに惹かれ、あれこれとシミュレーションして楽しんでいました。次第に自然と興味は創薬に向かっていきました。大学はいずれ創薬に関われるという軸で受験し、薬学部に進学します。

そこで待っていたのは過酷な現実でした。大学ではより実践的な内容のため、薬害被害のような負の側面についても学習します。その過程で、創薬の難しさ、また、一般に流通するのは一握りで、しかも10年スパンでの期間が必要という現実も知り、ぼんやりとしていた創薬への憧れは打ち砕かれることになります。4回生の研究室選択では、少し毛色の違う、生活習慣病をテーマにした研究室に入ることになります。

予防医療の可能性と現場のもどかしさ

大学の研究室では生活習慣病のための薬の開発にも携わることができました。ただそれ以上に印象的だったのが、医師でもあった研究室の教授が、生活習慣病は、生活を見直せば治るというレクチャーをしてくれたことでした。予防医療の可能性について考えはじめる大きなきっかけだったと思います。

大学卒業後は病院内の薬剤部に勤務しました。そこでは、漫然と薬が使われており、何ヶ月も同じ処方で薬が出されることも珍しくありませんでした。予防医療に可能性を感じ始めていた私にとって、そういった状況は非常にもどかしかったのを覚えています。

また、病院内では服薬指導という形で直接患者さんと交流することもできますが、自分自身が影響を与えられるのは薬の範囲内に限られ、その人が健康になるために貢献できる度合いが小さく感じていました。当時、非勤務時にはアルバイトをできる環境だったため、週に1,2回ドラッグストアで働いていたのですが、そこでは親身に相談に乗り、一緒になって喜ぶといったように交流が深かったのも、病院内での役割に物足りなさを感じた理由かもしれません。

変化の先の変化

転職、そして結婚退職

病気にならないことも大事なのに、そこまで踏み込めない役割にもどかしさを感じて3年が経過したころ、とある製薬会社の学術支援の求人に応募します。営業スタッフのサポートや、講演活動などが中心業務ですが、職種上の特権として最新の論文へのアクセスが容易なことや、正しい知識を広く普及するという立ち位置に惹かれ転職を決意します。知見が広まり、またアロマテラピーへ興味をもったのもこの時期です。元気のない同僚に対してアロマワークショップを開いたりと、仲間にも仕事にも恵まれていましたが、結婚を機に退職することになります。

フィットネスクラブで体感した運動習慣の大切さ

子育てに追われる日々を2年ほど過ごした後、フィットネスクラブに再び通うようになります。定期的に運動をすることで、家事の生産性もあがり、今まで以上に活動できるようになりましたし、精神的にも前向きになれるのを実感しました。さらに自分の母親の年代の方が運動を通じてハツラツとされているのみならず、運動するようになって薬がいらなくなったという話を頻繁に耳にしました。運動習慣が健康に与えるインパクトの大きさを改めて実感したのです。

仲間との出会いとチーム

その後、様々なご縁で、講演活動やセミナー・ワークショップを通じて、生活習慣の大切さや、薬との向き合い方などをお話させていただく機会も増えました。最近ではスポーツファーマシストとしてアンチドーピングに向けてのサポート活動も行っています。とはいえ、一人でできる範囲には限界があり、このままで良いのかという思いはずっとありました。

最近になり、共通の問題意識を持ちながらも同じような限界を感じている方と知り合う機会が増えました。運動の専門家もいれば医療の専門家もいて、多士済々です。そうした方々と意気投合し、より良い生活習慣・生活環境のための啓発活動を行うチームとして結成したのがウェルネスサポートという団体です。

チームになったことのメリットは本当に多くありました。単純に発信力が増すのはもちろんですが、議論することで企画のレベルが格段にあがりました。また、行政など外部の方に会っていただけることも増えたと思います。とはいえ、まだまだ実績が少ない団体ですので、まずは直近で予定しているイベントも含め、確実に実績を積み重ねていくことが大切だと考えています。

街の健康アドバイザーを目指して

歩み寄り、正しい情報、体感

今後の展望について教えてください

今までもたくさんの啓蒙イベントがありましたが、会場のアクセスが悪かったり、ターゲット像がぼやっとしていて中身に一貫性がなかったりすることが多く、もったいないと感じていました。ターゲットを明確にし、こちらからどんどん歩み寄っていくことで、本当に届けるべき人に情報が届くはずだと考えています。

また、巷には本当にたくさんの情報が溢れています。知名度の高いものも、実は根拠がはっきりしていないことも多いのが実状です。そうした中で、正しい情報を伝えることにはこだわり続けたいと思っています。このあたりは医療の現場に長く身を置いてきたからこそのこだわりかもしれません。

そして何より、変化を体感してもらうことを重視していきたいです。それがどれだけ小さい変化でも構いません。運動するようになったことによる変化、食事を見直したことによる変化、そういった最初の一歩をどんどんと後押ししていくための活動に邁進していきたいですね。

夢は問題解決型の薬局

いつか、問題解決型の薬局を作りたいなと思っています。ちょうど、子どもの頃に見た理想のかかりつけ薬局を、自分なりに進化させたイメージです。薬局としての機能はもちろん、スタジオがあって運動できたり、栄養士がいて食事の相談もできたりする。街の人たちが気軽に立ち寄り、生活習慣や生活環境をより良くするために相談し、健康になっていく。そんな場を創ることができたらいいなと夢見ています。

実はフィットネスクラブで運動習慣の大切さを実感したこともあり、Zumbaというエクササイズプログラムのインストラクター資格を取りました。なかなか活かせる機会はないのですが、いつか理想の薬局のスタジオでZumbaセッションを開き、たくさんの人と一緒に良い汗を流せる日がくるといいですね。

編集後記

薬剤師でありながら薬に頼る前にできることも大切にする。その独特の立ち位置と知見の広さを感じるインタビューでした。直近のイベント以外にも、オフレコのものも含めて色々と企画されていたので、これからの展開にも目が離せません。(あだつ)

参考サイト:facebook