2016.11.24

特別な瞬間を追い求めて


自然写真家として活動する川井さん。写真を仕事にするようになった経緯や追求するテーマ、今後の展望についてお話をお聞きしました。

川井昇さん
ShoKawaiPhotography代表。サーフィンをこよなく愛する自然写真家として活動するかたわら、フリーランスバリスタとして後身の指導も行っている。

Rio八木さんのご紹介

サーフィンが引き寄せた運命

両親がくれた運命の芽

昔から写真家になると考えていたのですか?

いえ、まさか自分が写真家になるとは思っていませんでした。昔からカメラに親しみがあったのは事実です。小さいころ、動物が大好きだったんですが、動物園に行くたびに親が写ルンですを与えてくれました。24枚という限られた中で写真を撮るという経験を子どもながらに楽しんでいたことを覚えています。

サーフィンをはじめたのも親の影響です。サーフィンはテクニックを追求する競技派の人と、自然と戯れるメロー派の二つに分かれるのですが、私は後者で、自然と一つになれる感覚が大好きで、関西を中心にサーフィンにどんどんとはまっていきました。

あてもなく乗り込んだオーストラリア

サーフィン好きが高じて、大学を卒業後、キャノンの一眼レフとサーフボードを手にオーストラリアへ渡りました。準備万端で乗り込んだというわけでは決してなく、サーフィンでの縁をたどりながら、なんとか現地での生活を作り上げていったのが実状です。当初は1年の予定だったんですが、現地での暮らしに魅了され、結局ビザの限界まで滞在し泣く泣く帰ってきたという感じです。

オーストラリアではいくつか引っ越しながら最終的にはバイロンベイという場所に住んでいました。そこはヨガ、アート、オーガニックなどのカルチャーが盛んで、人々がとてもシンプルに、ナチュラルに暮らしているのが印象的でした。「月がきれいだからビーチでディナーでも」といったように、自然が当たり前にあり、その中で豊かに、そしてシンプルに生きるというスタイルがとても自分に合っていたんです。日々の暮らしは刺激に溢れ、本当に楽しかったですね。もちろん、サーフィン環境として最高だったのも重要なポイントです。

バイロンベイの夕日の衝撃

バイロンベイに住むようになって1年が経った頃、今でも忘れられない出来事がありました。仕事帰りにビーチで見た夕焼けが、その日はいつにも増してきれいだったんです。誰が声をかけたわけでもないのに自然と人が集まり、楽器が演奏されダンスがはじまっていました。風景を見てあそこまで身震いしたのは、後にも先にもあれが初めてです。たまたま持ち合わせていたカメラでその景色を記録した写真が、今も自分の中で最高の1枚です。

その夕日以前にも写真はずっと撮っていたのですが、きれいな自然を記録しようという程度のものでした。ですが、この夕日を見た瞬間から、「こんな素晴らしい景色を多くの人に見てもらいたい」「特別な瞬間を写真で残したい」という想いが強く芽生えたんです。これが私にとって、いわば自然写真家としての原点です。

この夕日以降、特別な瞬間を追い求めて写真を撮るようになりました。とはいえ、感動するような瞬間に立ち会えることはそうそうありませんし、狙って撮れるものではありません。「あの夕日の1枚のような感動的な瞬間を、また写真におさめたい」という純粋な気持ちだけで、バイロンベイの自然を撮影していました。

写真家としての自覚

共感してもらえることが一番の喜び

撮影した写真の中で、自分自身が美しいと思ったものはソーシャルメディアに載せるようにしていたのですが、「家に飾りたい」「友人にプレゼントしたい」という声をいただくようになりました。自分が感動したものを同じように良いと言ってくれることや、同じものに感動し合える人に出会えたことが何よりも喜びでした。今でもこの気持ちは変わりません。自分と同じようにその風景から何かを感じて欲しい、そういった共感のために今も写真を撮り続けています。

バリスタデビューと拡がり

今は写真家と並行して、バリスタとしても活動しています。元々はオーストラリアにいる間、海でよく会うサーファーがカフェでバリスタをしているのを見ていて、何となくやってみたいという気持ちがありました。オーストラリアにいる間はバリスタの技術も知識も無かったので、そういった職に挑戦することすらできず、ただ憧れているだけでした。しかし帰国後、たまたま神戸に出店するサーフテイストのカフェのオープニングスタッフの求人を見つけ、未経験であるものの応募してみたら運良く採用されました。何にも染まっていなかったことが功を奏したのかもしれません。そこから、バリスタとしてのキャリアがスタートしました。

そのカフェを監修していたのが日本トップレベルのバリスタの方で、本当にみっちりと仕込まれました。当時、そのカフェはとても海外っぽいフランクな雰囲気で、自分の撮っている写真のことも、スタッフやお客さんとよく話していました。良いと言ってくれる人や応援してくれる人も多く、バリスタとしてのスキル向上と同時に、写真家としての自覚が強くなっていったのもこの時期です。今はそのカフェは辞めてしまいましたが、このときのつながりは今もとてもありがたいですね。

自分のライフスタイルの追求

新しい出会い、新しい瞬間を求めて

今後の展望を教えてください

今もオーストラリアやハワイなど、年に数回撮影に出かけています。日本にいるからこそできることもたくさんありますが、自分自身の気持ちが高ぶる撮影スポットは残念ながら日本にはそう多くありません。写真家としての自分の活動を考えるとどうしてもバイロンベイを筆頭とした海外が中心になってしまいます。

今は、サーフィンや写真など、自分のライフスタイルに合った場所に拠点を移す準備をしている段階です。作品の販売はもちろん、撮影のお仕事をしたり、バリスタを目指す人の指導をしたりしています。

近い将来、理想郷に拠点を移し、自分の写真を飾ったギャラリー兼カフェのような空間を作りたいですね。今後新たな土地でどういった瞬間と出会えるか、今から楽しみですね。

編集後記

JR芦屋駅にほど近い事務所は、本格的なエスプレッソマシーンやサーフィンテイストのインテリア、美しい写真で溢れ、川井さんの生き方を体現したようなお洒落な空間でした。特別な瞬間を追い求めてこれからも生み出されるであろう川井さんの作品に期待せずにはいられません。(あだつ)

参考サイト:Sho Kawai Photography