2017.1.31

整う豊かさを伝えたい


整理収納アドバイザーとして活動する西口さん。現在の活動に至った経緯や整理収納にかける想い、そして今後の展望について聞いてきました。

西口理恵子さん
インテリアR代表。整理収納をテーマにしたセミナー・講演活動に加え、インテリアプロデュースや書籍の出版、企業とのコラボレーションなど、多方面に活躍中。

人生を通じて感じた整理収納の可能性

思春期に感じた心地良さ

昔から整理収納は得意にされていたのですか?

いいえ、子どもの頃、進んで整理整頓をしていた記憶は特にありません。父は書斎の本棚は本屋さんのように仕切りで整理するほどきっちりした人でしたが、母は掃除は好きでしたが捨てることがが苦手でした。そんな母のもとで育ったせいか、私も不必要なものを「いる」と言っては取っておくタイプ。恥ずかしながら、自分の部屋は常に散らかった状態でしたね。

そんな私が高校生のとき、「整理収納っていいかも」と思う出来事がありました。勉強しなければいけないときに限って身の回りを綺麗にしたり模様替えをしたりすることは、誰もが一度は経験のあることだと思いますが、私の場合それが大学受験の勉強期間中に起こったのです。そのときは一瞬後悔するのですが、部屋が綺麗だと気持ちが落ち着いてイライラしなくなり、勉強にも集中できる!と心地良さが得られたのを覚えています。

今は仕事で「物を整理することで、心に余裕が生まれる」と謳っているのですが、今思えば、このときの気持ちが私にとっての原体験だったのかもしれません。

整理収納は性格ではなくスキル

大学卒業後、一時期派遣として働いていたことがあります。書類の整理方法を本で調べ、書類の整理を徹底することでその部署全体のミスが大幅に減り、派遣社員でありながら表彰されたんです。大企業でしたが前例のないことでした。そのとき、整理収納は方法論のあるスキルだということ、そしてそのスキルは実社会でとても役に立つものだと思うようになりました。

衣食住の住はもっと幸せにできる

その後、マンション事業を行う会社で働いていましたが、ある物件を任されたことが一つの転機になりました。間取りから取り組ませてもらえることになったので、マンション営業の仕事に役立つだろうと考えて取得していた資格、「整理収納アドバイザー」や「インテリアコーディネーター」の知識を使い、「片付けしやすい間取り」をつくろうと考えたのです。

そのときに考えたものが今で言う「リビングインクローゼット」でした。今でこそ増えましたが当時はまだ少なく、とても好評でした。購入していただいたお客様から、その間取りを直接褒めていただいたことは今でも忘れられません。衣食住のうち、衣と食は時間もお金も惜しまない人は多いのですが、住の部分は「物(家)に人が合わせる」という本来あるべき姿とは逆になっていることが多いと感じています。間取りや住まいの細かい工夫で実際に住がとても幸せなものになることを経験できたのは、とても大きかったですね。

整理収納は余裕を生み出す

父が亡くなったのももう一つの転機でした。医師にがんを告知された父は帰宅後、自分の身の回りにある不要だと思うものを捨てていたそうで、数ヶ月後に亡くなったときには遺品はほとんど残っていませんでした。残っていたものには付箋が貼られ、そこには必要な指示が具体的に書かれていました。そのおかげで、ある程度の期間を覚悟していた遺品整理はスムーズに済んだのです。

父の配慮がなければ、どうすれば良いのかわからず、今も遺品整理に右往左往していたかもしれません。遺品に限らず、物というのは存在しているだけでその人の時間や場所を奪っていきます。遺品処理をする側のことを思いやってくれた父の優しさに感動すると同時に、整理収納は空間や時間、そして心のゆとりを生み出すものだと思い、仕事として取り組むべき重要なテーマだと確信するようになりました。

思い込んだらトコトン

夫と友人に笑われながらも踏み出した第一歩

当時、結婚して3年ほど経っており、家族の今後のことも考える必要があったので、夫に「独立して、整理収納を仕事にしてみたい」と相談してみました。すると「モノを捨てさせてお金をいただくのは難しいと思うよ」と苦笑いされてしまったのです。また、夫の友人にも「これが仕事になるのか?」と一蹴されました。しかし夫は、私の「これだと思い込んだらトコトンやり抜く」性格を見抜いてか、笑いながらも「やってみたらいいよ」と背中を押してくれました。とてもありがたかったですね。

実践、実践、発信、発信

独立後、どのような点で苦労されましたか?

やっとの思いで独立はしたのですが、最初から仕事があったわけでありません。まずは情報を発信して気づいてもらおうと考え、これまで自宅や親族・友人宅で実践してきた収納ノウハウを、ブログに毎朝必ず投稿しました。ブログは、もうネタが尽きる!と思うほど投稿しましたね。

そんなあるとき、私の運命を変える一通のメールが届いたのです。私のブログの読者だった、女性誌『CREA』のライターさんからの連絡で、雑誌の特集で取り上げたいとのこと。これには私は飛び上がって喜んだことを覚えています。このとき「美しく暮らすためのプロの収納メソッド」という題で取り上げていただいたのですが、これがきっかけで、個人の方から整理収納の依頼をいただくようになり、さらには書籍の出版のお話や、企業様とのコラボレーション企画や講演の依頼をいただくようにもなりました。

セミナーは皆さんと直接お話できますし、すぐに実践してもらえるのでやりがいがあります。また、お礼の手紙をいただいたり、「整理収納できたよ!」とBefore/Afterの写真を送っていただけたりするのはとても嬉しいですね。

日本中の子どもの整理力を高めたい

今後の展望について教えてください

当初は「誰にでもできる、基本的な整理収納スキル」の普及を重視して活動してきたのですが、私自身の出産を機に仕事の意味や働き方を考えることになり、人生=時間であることから、より「時間を生み出す収納」を追求するようになりました。時間にゆとりが生まれると、「いつかしたい」と思っていることが「今」できるようになります。私自身も時間の使い方が豊かになり、仕事しながらも部屋を美しく維持し、週に1度は自宅で映画を愉しんでいます。今はセミナー受講者の方は女性が多いのですが、今後はもっと範囲を広げて子どもにも、「整理収納することで、したいことができるようになるよ」とアプローチしていきたいと考えています。

具体的には、子ども向けのコンテンツを発信したいですね。それが本でも、動画でも形態は問いません。結局は、当初の「誰にでもできる、基本的な整理収納スキル」の普及につながっていくのですが、スキルを向上させるためには子どもの頃から整理収納に触れる機会が必要だと思うのです。それを楽しみながら取り組んでもらい、実際に物を整理することで心が整理されることを体感してもらう、そんな機会をつくっていきたいですね。

編集後記

私自身、整理収納にきちんと取り組んだことはなかったのですが、インタビュー中にたくさんあった共感ポイント。少しは綺麗にできているのかなと嬉しく思いながら、整理収納にきちんと取り組んでみたいなと前向きに思える、そんな時間でした。子ども向けのアプローチなど、今後の活動も楽しみです。(きゅう)

参考サイト:Interior-R